ソフトダーツの人気対戦ゲーム、クリケットで有力な序盤の戦略についてまとめました。
「序盤」も序盤で、最早1, 2ラウンド目くらいの話だけに特化しています。
そのため、あえて体系化しなくても良さそうなことをさも理論のように語っていますが参考になれば幸いです。^^;
【イメージ】各戦略の理想形
左から順に戦略1、戦略2、戦略3の理想形となっています。
どれが一番有利(後攻から見て不利)に見えますか?
戦略は1つに絞るべき?
1つに絞るのもアリだと思いますが、複数の戦略を時々に応じて使い分けることでクリケットの楽しさ・奥深さがさらに広がると思うので、個人的にはいろんな戦略を試すことをオススメします。
戦略1:TON80狙い(T20×3)
開幕でT20を3連発。これ以上ない最高のスタート。
T20→T20→T20で20のオープンと120点をせしめる最もオーソドックスな出だし戦略。先攻で奇をてらわず無難に始めたいならコレが王道です。
スコアで優位を築き、次のラウンド以降はクローズ&加点を繰り返す形になります。
TON80狙いのメリットは?
- (TON80を決めれば)1ラウンド目にスコアで逆転されることは絶対ない
- 他の戦略への転換が容易
開幕で20オープン&120点をゲット。相手はどう打ち返しても1ラウンド目で120点を超えることはできないので最高の出だしと言えます。
9マークが取れなくても5マーク、4マークを打てればリードを保てる可能性は極めて高いので安定度が高い戦略と言えます。
T20のセグメントのちょうど上に1本目が行ってしまい、「そんなとこ刺さったらトリプル狙えないよ…」となったときにT19狙い(戦略2)に転換できます。
だからとりあえずスタート時は「TON80狙いでいこう」と決めておけば間違いないと言えます。
TON80狙いのデメリットは?
- 試合が長引く可能性が高い
他の戦略は早々に2ナンバー、3ナンバーをオープンしに行く戦略なのに対し、TON80は20だけをオープンしに行く戦略なので、往々にして試合は長引く可能性がアップします(相手次第)。
同じくらいのレベル・調子の人が相手なら、白熱の体力勝負になりやすくなります。
⇒オーソドックスな戦略であるだけにデメリットは小さいのがTON80スタートの特長だと思います。
対する後攻側の応手は?
⇒基本的には19のBEDを狙います。
TON80には19BEDで。ハイレベルな応酬。
先攻が20をオープンして、さらに加点したのであれば、基本はT19のBED狙いが無難な返しです。
T19→T19で相手のスコアを逆転し、残り1本で20クローズチャンスを得た例。20, 19どちらも有力(決まればどっちでもいい^^;)
ただ、↑のようにT19→T19の時点で相手のスコアを上回った場合、
- T19で更に加点するか(相手のミスを待つスタイル)
- T20クローズを狙いに行く(積極的にリードを奪いにいくスタイル)
という選択肢が生まれ、ここはその日の調子や相手の傾向、スタッツ差などを考慮して決めることになります。
もし先攻が20をオープンし損ねたのであれば、19でなく20を狙い、早速相手のミスをとがめにいくのが王道です(下図)。
2マークで終わった先攻に対し、後攻が5マークを決めた例。もう後攻が相当有利に。
ここでミスって2マーク以下で終わると、今度は一気に先攻が有利になるので要注意です(あるある)。
先後が入れ替わるような形になれば後攻ブレイクの確率も大いにアップします!
2ラウンド目以降の展開は?
先攻側としては築き上げたスコアの優位を保ちつつ、相手のナンバーをクローズしていく展開が基本になります。
「相手が1本トリプルを打って加点してもまだ自分がリードしている」くらいの点差を保ちながら、順々にオープン(クローズ)していくことで順当勝ちが狙えます。
この戦略を採用するのにオススメな方は?
相手のスタッツが分かる場合、スタッツ的に自分のほうが十分優位(自分のほうが地力が高いと思う)という場合はこの戦略を取ると勝率が安定すると考えられます。
この戦略はえてして(他の戦略とくらべて)長期戦になりやすい傾向があるため、長くなればなるほどスタッツ(MPR)差がゲームに反映され、マーク数で優位に立つはずの自分が有利になりやすくなります。
そのため、浅田斉吾選手はコレに近い戦略(しっかり加点してからクローズするスタイル)をよく採るイメージがあります(打ち合えばほぼ勝てるはずだから奇をてらう必要が全くない)なお過去に浅田さんが2連続ホワイトホース&ハットの3ラウンドで勝ってた動画(非公式戦)をYouTubeかniconicoで見たことありますが……^^;(動画のソース知ってる方教えて下さい!)
参考動画
かの有名な「後攻が4連続BEDだけど勝ったのは先攻」というD-CROWN最終戦のラストLEGです。橋本守容選手対知野真澄選手のまさにプロフェッショナルなゲームです。
冒頭7マークでスコア(80点)を稼ぎ、以下相手にスコアをオーバーされながらも加点→クローズ→加点を繰り返し、最後まで先行有利を保っての勝利です(とはいえ薄氷の勝利)。
15で逆転の目がありましたが、2本目が1本目に刺さったダーツに弾かれて5連続BEDを逃す不運でしたね…(ダーツなければ2本目も入って20トライできたのでは??)
戦略2:20, 19両オープン狙い(T20×2→T19)
まず20をオープンし、加点の後19をオープンしに行く戦略です。
加点のタイミングは2通りあって、
- 20を2本狙ってオープン&加点の後19に行くパターンと、
- 20オープンから早速19を狙いにいくパターンの2パターンが考えられます。
想定できる成功パターンとして……
- S20→T20→T19
- T20→S20→T19
- T20→S19→T19
が考えられます。また、
- T20→T19
と連続でトリプルを打てれば、T18オープンを狙う戦略3の開幕ホワイトホース狙いへの転換も可能になります。
20, 19両オープン狙いのメリットは?
- 数値的に大きい2つのナンバーを先に押さえることができる
- 精神的に優勢になる
- 相手にプレッシャーを与える
長期戦になったとき、同じマーク数を入れてもスコア上有利になっていきます。(T20とT18の打ち合いなら1本ごとに6点の差が)
↑の画像(各戦略の理想形)を比較した時に「中央が一番有利に見える or 後攻側から見て不利に見える」と感じた場合は、この戦略を採用するのがオススメです。
後攻側は1本目を投げる時点で20と19が相手にオープンされており、残すところ18から15の4つしかないという状況で開幕します。
ここで18(or 17)をオープンしそこねたら次は18と17がオープンされるかも……と考えると非常にプレッシャーです。
20, 19両オープン狙いのデメリットは?
- 19をオープン出来なかった時に、(一時的ではあるが)1本 or 2本が「ムダ」になる可能性がある
20をまずオープンし、残り1, 2本は19に狙ったけど19をオープンし損ねたとします。
次の相手の番で19をオープンされ、さらにスコアを上回られた場合、S19を狙った1本(2本)が一時的に「ムダ」になります。
「ムダ」になり得る例。次に点数をまくって19をクローズできればそれほど問題はないものの、オーバーし損ねたり19クローズに失敗すると、その19狙った分が一時的に無意味となり、相手に逆転チャンスを与えやすくなる。
「ムダ」というのは、ナンバーは最短(トリプルを)1本打てばクローズ可能なのに、既に1本(2本)投資したあげく、そのナンバーで加点することはできないという点において「ムダ」と言っています(こうなるくらいなら20いっときゃよかったという感じ)。
無論、次のラウンドで20を打ってスコアを上回り、19をクローズできればムダではなくなるのですが、それがT19にもし行ったとしたら、やっぱり最初の1本(2本)はムダにしたなという感が否めません(そういうのは気にしてはいけないのかもしれないけど)。
対する後攻側の応手は?
18を6マークでスコアをオーバーした例。18をオープンして、スコアをオーバーできれば上々の返し。
20, 19をオープンされたらとりあえず18か17を狙い、スコアでリードを狙うのが定石です。
相手は2本をナンバーをオープンするために使っているため、スコアは少なめになります(最高でも60)
相手のスコアを上回るだけの返しができればとりあえず上々といえます。
もし上回れなかった場合、先攻は勢いよく次のナンバーをどんどんオープンしに来る(クローズしに来る)ため、序盤から勝負所になります。
後攻の18が4マークで終わったため、先攻が第2ラウンドで18クローズ&17オープンを決めた場合の例。まだまだ逆転は狙えるものの、この時点ではだいぶん先攻が有利に。
↓のように、先攻が20オープン、19を2マークされた場合の応手がやや厄介で、
- 素直に19を狙う手と
- 他の手つかずのナンバー(18や17)を狙う手
の2通りが考えられます。
先攻はもう19をシングルヒットでオープンできる状況のため、後攻としては「19を狙ったら3マークで終わりました(スコア逆転できなかった)」となると、次のラウンドでほぼ確実に19をクローズされてしまい、たちまち不利になります(先攻が2マークしてようが後攻は19をオープンしておくことで、次に先攻がT19を打っても1マークにしかならない、というメリットはあるので決してムダにはならないが……)。
この戦略を採用するのにオススメな方は?
- 比較的19を得意とされている方
- 20は比較的得意ではないという方
↑これのどちらも当てはまる方は特に向いているような気がします。
「あえて得意でない20で加点する」オーソドックスな戦略を必ず採用しなければいけない道理はないですからね。
参考動画
PERFECTの決勝で浅田斉吾選手が採用していたので引用します(2本目のダーツの刺さりどころが悪かったから19に行った説もありますが^^;)。
途中20をクローズされる展開になるのですが、それでもまだ19(相手より大きいナンバー)が残っているというこの作戦の強みを見事に活かした感じで、浅田選手がこのレグを獲りました。
戦略3:開幕ホワイトホース狙い(T20→T19→T18)
よーいドンで20, 19, 18をオープンする電光石火の戦略です。
スコアは0点ですが、3ナンバーオープンは強力です。
ホワイトホースまでいかなくても、2ナンバーオープン+S18くらいまで行ければ大成功といえます。
T18ではなくT17を狙うほうが、2本連続下側を狙うことになるため、ほんの少しですが難易度は下がるかもしれません。
開幕ホワイトホース狙いのメリットは?
- 試合を速攻で終わらせられる可能性がある(理論上最速3ラウンド8本^^;)
- 相手に強力なプレッシャーを与えられる
- 仮に失敗しても別の戦略に転換できる
例えばリーグ戦などに参加していて、このあとも試合が多く予定されている時などに、体力を温存すべく極力早く試合を終わらせたいという場合に有力な戦略といえます。
後攻側はもう残すところ17, 16, 15です。いきなり後がありません。非常にプレッシャーです。
最初はホワイトホース狙いのつもりで始めて……
T20→S19:3本目は20か19に変更
S20:T20×2狙い(戦略1)でもT20→T19狙い(戦略2)でもどちらにでも転換可能
という感じで応用がいくらでも利く柔軟性がメリットです。
開幕ホワイトホース狙いのデメリットは?
- スコアで後攻に遅れをとる
- オーバーキル寸前までの加点でとがめられる可能性
ホワイトホースを決めたとしてもスコアは0点です。次の後攻がT17のBEDを決めた場合0-102となり、スコアで一時的に不利に立たされます(↓画像)。
ホワイトホースに17ベッドで返した超ハイレベルな応酬の例。まだどちらが有利か全く形成不明。
2ラウンド目以降の戦略として2パターン上げられますが(後述)、ここでしくじると後攻に一気にとがめられる可能性があるので要注意です。
「そっちがオープンならこっちはスコアだ」と延々加点され続け、それに対応できないとオーバーキル寸前まで離されてどうにもならなくなる可能性もあります。
後攻側としてはスコアを積み重ねることがホワイトホーススタートをとがめる最も妥当な方法といえるので、このリスクは常につきまといます。そして結果的に長期戦になります。
あまりに勝ち確定のような局面でさらに加点し続けたらマナー違反というか迷惑に近いものがありますが……
対する後攻側の応手は?
ホワイトホースにはホワイトホース(3ナンバーオールクローズ)を……というハンムラビ法典的戦略も考えられますが……^^;
ここはT17(T18)を3本狙い、スコアで優位に立つ方法が最も無難かつ有効と考えます。
先攻は3つのナンバーをオープンしている反面スコアは0なので、とりあえず加点に加点を重ねてスコア的に大優勢を築いてから1ナンバーずつクローズしていくのがベターです。
ただ、相手は20を、コチラは17(18)をオープンしている状態なので、打ち合いが長引くと徐々に不利になる点は要注意です(同じくらいのマーク数を打ち合った場合、どんどん点差が縮まることになる)。
この戦略を採用するのにオススメな方は?
超実力者 (身も蓋もない……^^;)
そもそもT20→T19の時点でも高難易度です(Aフライトくらいの実力があっても成功確率10%くらいでは…?)。そこから更にT18です。
採用するのは意思の問題なので簡単ですが、実現するのが難しいのが現状です。
参考動画
記憶に新しいのだと知野真澄選手が、PERFECTの決勝戦の優勝王手のゲームで浅田斉吾選手に対して採用した例ですね。
しかも……後攻でです^^;
実はこの勝負は結構伏線めいたものもあって、ここまで両者ともに加点→クローズを基本とした長期戦ばかり行われていたという背景があります。
そんな展開から、最後のクリケットだけ超絶電光石火を仕掛け、結果的に2連続ホワイトホースでシャットアウトするという荒業を成功。
※良い子はマネしてはいけません^^;
改めて観ると……浅田選手は相手の勢いに慌てて乗ってしまった感ありますね(ここまでの展開を鑑みれば)……1回目の馬のあとはT17×3狙う手も考えられますが、T19→T18で相手の戦略をとがめたい&それが高確率で実現できるのでやっぱりそっちが最適解というのもわかる気がします。
その他の序盤戦略は?
基本的に「1本目は20」という考えが絶対的に有利なため、上記3つ以外の戦略となると案外見つからない(浮かばない)のが現状です。
20以外から始める理由としては例えば、
「対戦相手はどうも20と18がめちゃ苦手らしい。だから先に19と17をオープンして、相手に20と18を打たせるよう誘導しよう」
とか、
「20のヒット率がかなり低いから19から狙おう」
というのが考えられますが、これらは戦略というより対策に近いかなと思っています(ほとんど意味合いは変わらないと思いますが…)。
まとめ
個人的にはコレが一番有利に感じるんですが、どうでしょう?
どの戦略も有効で、うまく使い分けることで勝率を上げることができると考えます。
普段から試して戦略が自分自身と相性が合ってるか確かめてみることをオススメします。