スイマーのみなさん、こんにちは~
前回の記事にて水泳に関するカロリー消費計算の定義(METs)がやや曖昧であることについて言及しました。
じゃあ自分で勝手に定義するかと思い、定義してみました^^;
結果的に「平泳ぎ、METs高いけどやっぱクロールのほうがいいんじゃね?」となったので、その過程をレポートします。
※所詮元競泳経験者の個人の見解であることをご承知おき願います。
おさらい:METsの定義と水泳のMETs
「METs」の概要に関しては前回記事に掲載してますので参照ください。
まず、消費カロリーと体重(m)、活動時間(H)、METsの関係式は以下のとおりです。
= 1.05 × METs × H × m
4泳法の練習強度と、それに対するMETsは以下のとおりです。
種目 | 練習強度 | METs |
---|---|---|
クロール | 68.6m/分未満 きつい労力 |
10.3 |
45.7m/分未満 きつい労力 |
8.3 | |
背泳ぎ | トレーニング、競技 | 9.5 |
レクリエーション | 4.8 | |
平泳ぎ | トレーニング、競技 | 10.3 |
レクリエーション | 5.3 | |
バタフライ | 全般 | 13.8 |
参考文献:国立健康・栄養研究所発行の「身体活動のメッツ(METs)表」(PDF)
で、問題なのは…
- 競技とレクリエーションの境界はどこなのか?
- クロールのような速度の定義付けはないのか?
という点です。
それぞれの泳法のMETsを出すタイムとフォームを定義する
早速本題に入ります。今回以下の2つについて実施しました。
- 「競技」、「レクリエーション」という単語から、各練習強度のより細かい泳法まで規定する
- クロールのタイムから「クロールでそれなら他の泳法だったらこんなもんだろう」というタイムを経験から定義する
1はともかく、2は個々によって見解が分かれそうなため、議論の余地が相当あります(コメントください)。
前提条件
METsは速度に対して比例する(1次線形)
→2つのMETs条件に対して速度を定義さえすれば、その間に関してはMETsを定義する(内挿する)ことができます。
(参考)クロールはどう出したか?
前回の記事で1分あたり50m, 55m 60mの速度で泳いだ場合のMETsを概算しましたが、その時の算出方法を説明します。
METs表で定義された2つの速度とMETsの関係から連立方程式を立てて、傾きと切片を算出します。その結果…
y = 0.074236x + 4.907
という式が求まります。
あとはxに速度(m/min)を任意で代入すれば、y(METs)が求まります。
ただ、問題点として、2値(クロールの場合、45.7~68.6)間のxだとまだ信用度は高いですが(内挿のため)、その範囲外になると信用度は薄れますので注意です(外挿のため)。一応1次線形だと定義してますが念のため…
キリの良い速度のMETsを内挿&グラフ化すると↓のようになります。
変換
まず、1分あたりに泳ぐ距離っていう定義があまり競泳界ではない…と思うので、わかりやすくするために50mあたりに変換してから逆変換します。
参考:クロール
METs | 1分あたり距離 | → | 50mあたり時間 |
---|---|---|---|
10 | 68.6m | → | 43.7秒 |
8.3 | 45.7m | → | 65.6秒 |
背泳ぎ
まずは比較的METsが低めの背泳ぎです。
泳法
- 競泳
- 基本的な泳法規定に沿って泳ぐ
- ターンはクイックターン
- レクリエーション
- 仰向けで泳いでいれば泳法違反だろうとOK
クイックターンかタッチターンかは正直どっちでもよさそうに思いますが、ここは「競泳」という言葉を重視してクイックターンとします。クイックターンの方が少ししんどいです。
この時点で僕はやりたくないですね(笑)
レクリエーションは最悪プルなしでもOKと思ってますが、それだったらタイム的にキツいと思います。
タイム
クロール→背泳ぎに換算すると…
練習強度 | クロール | 背泳ぎ | |||
---|---|---|---|---|---|
METs | 50mあたり 時間 |
50mあたり 時間 |
1分あたり 距離 |
METs | |
競泳 | 10 | 43.7秒 | 50.0秒 | 60.0m | 9.5 |
レク | 8.3 | 65.6秒 | 75.0秒 | 40.0m | 4.8 |
「クロールを43.7秒で泳ぐ」のが本気なのか流しめなのかで背泳ぎのタイムは大きく変動しそうなので定義するのが難しいのですが、世界記録の差などもろもろを考慮したらこんなもんかなと…。
クロール50mを43.7秒くらいで泳ぐ人の背泳ぎ50mが50秒くらいというところは、完全に僕の感覚です(なので相当議論の余地がある^^;)。
レクリエーションはもうちょっと遅いかな…なにせ4.8METsですからね…
キリの良い値を内挿&グラフ化以下のようになります:
平泳ぎ
次は効率最高という噂が立っている(?)平泳ぎです。実際はそんなことないのですが…
泳法
- 競泳
- 泳法規定に沿って泳ぐ
- 蹴伸び(ターン)後はひと掻きひと蹴りをする
- レクリエーション
- 泳法は気にせず、平泳ぎっぽければOK
ひと掻きひと蹴りをするかしないかで疲労度は全然違ってきます。
要は距離が長くなるほどひと掻きひと蹴りの際の水中が息苦しくなってきます。ナシだったらどれだけ楽か…それが考慮された10.3METsかなと思っています。
レクリエーションは見た目が平泳ぎっぽいやつという程度です。おそらく大半の人は泳法違反です(あおり足など)^^;
タイム
練習強度 | クロール | 平泳ぎ | |||
---|---|---|---|---|---|
METs | 50mあたり 時間 |
50mあたり 時間 |
1分あたり 距離 |
METs | |
競泳 | 10 | 43.7秒 | 55.0秒 | 54.5m | 10.3 |
レク | 8.3 | 65.6秒 | 80秒 | 37.5m | 5.3 |
もしかしたら「50mあたり55秒ペースだったら余裕じゃね?」って思われる方がいらっしゃるかも…?
その辺の裁量が難しいですね…僕はBr苦手なので、その影響がある程度加味されてしまってるかもしれません^^;
ちなみに僕は55秒だったら正直キツいです。200mもペース保てないと思います。
内挿&グラフ化すると↓のような感じです。
バタフライ
バタフライは練習強度が全般(競泳、トレーニング)しかないため、普通に泳法規定に沿って泳いだという想定で考えます。
練習強度 | クロール | 平泳ぎ | |||
---|---|---|---|---|---|
METs | 50mあたり 時間 |
50mあたり 時間 |
1分あたり 距離 |
METs | |
全般 | 10 | 43.7秒 | 46.0秒 | 65.2m | 13.8 |
バタフライは、クロールとそれほどタイムは変わらないのと、METsの高さを考慮したら50mあたり46秒くらいかなと思いました。
50秒だと遅すぎる気がします(背泳ぎを50mあたり50秒にした手前)。
残念ながらバタフライにはレクリエーションの際のタイムはないので、傾きが出せないのでグラフは点が一個つくだけです。
クロールの傾きとそれほど変わらないかなとか思ったのですが、推測に推測を重ねていくのは的外れな結果になりかねないのでやめておきます。
4泳法のグラフを合成
以上4つの泳法をグラフ化すると以下のようになります。
考察
以下、あくまで速度を僕が規定した、という前提での考察になりますが…
クロールの安定感
速度の低下によるMETsの低下具合はクロールが一番マシである(傾きが小さい)ということがグラフから伺えます。
一番遅い45.7m/minでも8METs以上あるのはクロールだけです(あとたぶんバタフライもですが…)。
平泳ぎで同等のMETs(8.3)を出すには、47.7m/minで泳がないといけません(50mを62.9秒ペース)。
平泳ぎがそれほど美味しくない
平泳ぎが一番効率が良い!を過信しすぎて平泳ぎをやっても、タイムが遅ければ(≒平泳ぎとしての泳法があまりに競泳とかけ離れている場合)思ったほどのカロリー消費が発生しないのでは?ということも考えられます。
マスターズの試合で平泳ぎを泳ぐような人であれば10.3METsレベルのカロリー消費が期待できますが、見よう見まねで平泳ぎをやってる人はもしかしたら5.3METs程度になってしまうため、その点要注意です。
総評
総じて言えることは…
クロールは泳ぎ方やスキルによる影響が小さいので、よほど平泳ぎが得意な人を除いてカロリー消費には一番最適なのでは?というのが今回の結果に対する意見です。
さいごに
軽いノリで作るつもりだったのに、まさか記事作成含めて6時間もかかるとは思いませんでした(笑)
ただ、なかなか個人的には良い指標ができたなと勝手に思っています。
本当はメニューまで考えるつもりでしたが、次回に回します^^;
総合して言えることは、できるだけ長い時間泳ぐことが大事かなということです。
METsを利用したカロリー消費計算式から分かるように、カロリー消費量は活動時間に比例します。泳法のスキル云々よりも泳いだ時間の影響度は大きいです。
ペースは遅くても泳ぎ続ければカロリーは消費されるし、泳ぎ慣れてくればペースも上がってカロリー消費効率も上がってくるので、1日のメニューというスパンでも、人生というスパンでも継続して泳ぎ続けることがダイエットならび健康の秘訣といえそうです。
余談1
「消費カロリー 水泳」で検索したところ、距離とペース(泳いだ時間)からMETsを概算して消費カロリー数を表示させるスクリプトを公開しているサイトを見つけました。
クロールなら前回記事のように2つの定義された速度とMETsの関係から内挿で求められなくもないですが、クロール以外はどうやって定義したのか気になります。
最初このサイトを見つけた時、このページ紹介して終わろうかと思ったのですが…^^; それだとこの記事の存在価値がほとんどないので、結局自分でも算出しました。
余談2
あまり批判とかはしたくないんですけどね…
検索してヒットとしたとある記事、
この記事を書いたあなた(まあこの記事を見てる可能性は限りなくゼロだろうけど…)平泳ぎをナメてますね?
少なくとも競泳経験者じゃない人の記事であることは容易に想像できます。
おそらく平泳ぎの「競技」のMETsが高いからそう思ったのでしょうが、楽して痩せる≒レクリエーションレベルの平泳ぎのMETs(5.3)は早歩きの方がマシというレベルなので、思ったほどの効果はないだろうというのと…
「楽して痩せたい」という発想レベルの人が、30分も平泳ぎを続けられるわけねーだろという(笑)
「平泳ぎは楽」という発想自体がダウトです。あくまで「他の泳法と比べてダラダラと泳げば」という条件に置いて楽なだけです。平泳ぎ専門の人に「いいよねー平泳ぎは楽だから」と言うと高確率で説教を食らうので気をつけましょう^^;
その他性別や体重、速度など条件を一切提示せず「クロールは1時間で1300kcal消費する」と表記してたりと、適当さも見受けられます。
ということで、この記事だけは少しイラッときたので晒しました^^;(アドレスは晒さない)
では~